2010年度フランス語コンクール決勝大会

 

2010年フランス語コンクール 

 

1位       日仏会館理事長賞 ACCORD賞

              杉原正志 Tadashi SUGIHARA (フランス語通訳案内士)

              Mes deux grands-pères 二人のおじいちゃん

フランス大使館特別賞(1位と同等)

              山下晶子 Shoko YAMASHITA (上智大学)

              Le moment de la Beauté 美的な瞬間

2位       エールフランス賞 CIDEF賞

              有賀 笑 Emi ARUGA(南山大学)

              Touche pas à ma langue ! 進化する言語への期待

3位      ケベック州政府賞

              日向亜由美 Ayumi HINATA(中央大学大学院)

              Volubiles Français 饒舌なフランス人たち

 

奨励賞 日本ロレアル賞

              谷 瑞紀 Mizuki TANI(京都外国語大学)

              Le kendo, un art, un sport ou les deux à la fois ? 剣道の本質とは

奨励賞 バカラ賞

              宮嶋 歩 Ayumi MIYAJIMA(慶応義塾大学)

              Le Bonheur et la Peur 幸福と恐怖

奨励賞 ル・コルドン・ブルー賞

              松戸綾乃 Ayano MATSUDO(国際連合広報センターインターン)

              Une personne à l’origine d’un miracle 奇跡を生む人

審査員賞 

              田中優衣 Yui TANAKA (慶応義塾湘南藤沢高等部)

              La peine de mort  死刑制度

 


 

 

講評                  

審査委員長 中井珠子

 

2008年に日仏修交150周年を記念して始まった「公益財団法人 日仏会館主催 フランス語コンクール」の第3回決勝大会が2010年11月20日(土)に開催されました。

今年は在日フランス大使館、ケベック州政府代表部、朝日新聞社、財団法人フランス語教育振興協会(APEF)、東京日仏学院の後援、そしてエールフランス航空、バカラパシフィック、ル・コルドンブルー・パリ、日本ロレアル、パリの語学学校ACCORD、アンジェの語学学校CIDEFの協力を得ることができました。そのおかげで豪華な賞が並び、上位4人が往復航空券つきで、フランスだけでなく、カナダのケベック州にも行けることになっています。

 

今年度は応募者数が昨年度より大幅に増えて60人でした。関東をはじめ中部、関西そして広島に至る全国各地から、たいへん広い年齢層の方々が応募してくださいました。うちわけを見ると高校生6人、大学生・大学院生29人、そして社会人は20代5人、30代6人、40代3人、50代2人、60代4人、70代3人、80代1人。男性は13名、女性は47名でした。

決勝出場者15人のうちわけは、高校生1人、大学生・大学院生10人、社会人4人(20代2人、30代1人、50代1人)、そして男性は3人、女性は12人でした。

 

テーマとして «Une personne que j’admire »「私の尊敬する人」あるいは自由論題のいずれかを選ぶことができたため、多様な内容の興味深いエッセイが寄せられました。とくに決勝大会は非常にレベルの高いものでした。

評価のポイントになるのは、まず内容のオリジナリティと構成です。「尊敬する人」というテーマを選んでも、単にある人について語るのではなく、独自の視点があり、話が立体的に展開するよう工夫されているスピーチ、あるいは自由論題で個人的な経験を述べるにしても、別の事柄と重ね合わせて普遍的な結論を導き出すことに成功したスピーチなどが高く評価されました。

たとえば1位の杉原正志さんのスピーチは戦争体験の伝達と平和の大切さを静かに主張するものでした。尊敬する「二人のおじいちゃん」の戦争体験談に始まり、以前は、戦争を知らない自分がそれを語るのはおこがましいと感じていたが、広島で原爆についてインタビューをする子どもたちと外国人観光客の交流を見たことをきっかけに考え方が変わった、と話して共感を呼びました。

2位の有賀笑さんは移民の若者たちが使うフランス語について肯定的な視点で論じました。正しいフランス語に逆らって若者たちが創り出す言葉を、万人に理解されはしないが独創性を評価される現代芸術になぞらえて、新しい可能性を生む「言語の進化」ととらえる考え方を提案するスピーチでした。

3位の日向亜由美さんはフランス留学中、なぜか相手に説得されてしまうことが多かった経験を出発点に、フランス人の巧みな議論展開が学校の授業で日常的に練習を重ねた成果であることを明らかにしました。そして、これからの日本人には論理的思考と議論構築の訓練が必要だと結論づけました。

唯一の高校生で、審査員賞を受賞した田中優衣さんは、死刑制度について賛否両方の論点を示してから、反対する自分の意見を述べ、もっと議論を重ねるべきだと主張しました。重く難しいテーマですが、ずっと前からこの問題について考えているというだけあって、真摯な気持ちが伝わってきました。

 内容とともに話し方も重要なポイントです。フランス人のような発音で、すらすら話すことが求められているわけではありません。今年度はごく自然な態度で語りかけるスピーチが非常に多く、好感が持てました。ただし、マイクが使えるとはいえ大きな会場ですから、はっきりと聞こえる声、明瞭で正しい発音、そして比較的ゆっくりとしたスピードで話すことが大切です。

たとえばフランス大使館特別賞の山下晶子さんは、画家ロートレックの生涯をたどりながら、美は醜さの中に瞬間的に現れるものであり、美を見出すには醜をも知らなければならないと論じました。やや抽象的な表現もたくさん織り込まれていましたが、発声、発音、リズム、イントネーション、緩急そして表情、すべてが内容理解の助けになって、会場全体が話にひきこまれました。

 スピーチと質疑応答のレベルに開きがあると評価が低くなりますが、今回はそのようなケースはあまり見られませんでした。緊張の中で、次々に出される質問に自分の言葉で答えるのは、たいへん難しいことです。それにもかかわらず、ほとんどの出場者が答えの内容を上手に展開し、審査員との間にしっかりとコミュニケーションを成立させていたのは見事でした。

 

年齢も経験もまったく異なる方々に開かれていることが、このコンクールの特徴です。以前はフランス語圏に1年以上滞在した方には応募資格がありませんでしたが、今年度から、その制限が「18ヶ月以上」とゆるやかになりました。今後も幅広く、多くの方々が参加してくださることを期待しております。

ただし、今回の1位およびフランス大使館特別賞の受賞者お二人には、1ヶ月、3ヶ月という短期間の滞仏経験しかないことを申し添えておきます。

 

最後に、会場で長時間にわたってスピーチをお聞きくださり、出場者に暖かい励ましや賞賛の拍手をお送りくださったみなさまに、心からお礼を申し上げます。

 

 

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