コンサート・上映

(レクチャーコンサート)≪日仏会館90周年記念≫ 中世プロジェクト(レクチャーコンサート) 「 中世フランス歌曲の歴史」

金澤正剛(音楽学)、花井尚美(歌)  古楽アンサンブル アントネッロ 濱田芳道(リコーダー&コルネット)、石川かおり(ヴィオラ・ダ・ガンバ)、西山まりえ(チェンバロ&中世ハープ)

“イベント詳細”

2013-06-14(金) 18:30
会場
日仏会館ホール
東京都渋谷区恵比寿3-9-25 渋谷区, 東京都 150-0013 Japan
日仏会館ホール

助成:公益財団法人石橋財団

 

プログラム
1部:中世歌人と騎士道(トルバドゥールとトルヴェール)

I Troubadours et Trouvères

 

ギロー・ド・ボルネイユ:バラード《栄光の王よ》(朝の歌)

Giraut de Bornelh : Reis glorios (alba)

 

獅子心王リチャード:バラード《囚われ人の歌》

Richar Coeurs de Lion (Richard I) : Ja nuns hons pris (ballade)

 

ディア女伯爵:バラード《嫌なことも歌わずにいられない》

Comtessa de Dia : A chanter m’er de so qu’eu no volria (canso)

 

ランボー・ド・ヴァケイラス:《五月の日々も》(エスタンピー)

Raimbout de Vaqueiras : Calenda maia (estampie)

 

2部:新しい芸術へ向けて(アルス・アンティカと舞曲)

II Ars antiqua et musique de danse

 

作者不詳:ドゥクツィア

Anonymous : Ductia

 

作者不詳:モテット《花よりも美しいひと》(モンペリエ写本より)

Anonymous : Plus belle que flor est (motet from the Montpellier Codex)

 

アダン・ド・ラ・アル:ロンドー《牧場のバヤール》

Adam de la Halle : Baiars en la pasture (rondeaux)

 

 

3部:中世の極致(アルス・ノヴァからアルス・スブティリオールへ)

III De l’ars nova à l’ars subtilior

 

ギョーム・ド・マショー:ヴィルレ《心とろかす美しい女》

Guillaume de Machaut : Doulce dame jolie (virelai)

 

ヨハネス・シモン・アスプロワ:バラード《煙を吸えば》

Johannes Symonis Hasprois : Puisque je sui fumeus (ballade)

 

アントネッロ・ダ・カゼルタ:ヴィルレ《恋が私の心を》

Anthonello da Caserta : Amour m’a le cuer mis (ballade)

 

作者不詳:ヴィルレ《さあさあ、眠りすぎだよ》

Anonymous : Or sus, vous dormés trop (virelai)

 

4部:ルネサンスへの道

IV Le Chemin vers la Renaissance

 

ギョーム・デュファイ:バラード《美しいひとが塔の下に座り》

Guillaume Dufay : La belle se siet au piet de la tour (ballade)

 

作者不詳:フランス風バッロ《恋人》

Anonymous : Ballo francese “Amoroso”

 

ギョーム・デュファイ:ロンドー《この五月》

Guillaume Dufay : Ce moys de may (rondeaux)

 


中世フランス歌曲の歴史

歌曲というものはいつの世のどこにでも存在した筈で、それは中世のフランスでもその通りであったと思われる。しかし中世を通して活躍していたジョングルールやメネストリエたちは、自分たちの歌った作品を残さなかったし、そもそも残す気もなかった。ところが11世紀の終り頃から騎士階級や貴族たちの名のある人たちが歌曲を作って披露するようになると、それは記録して残す根拠が生じてくる。それがオク語で詩を書いたトルバドゥールと、オイル語を用いたトルヴェールであった。

一方教会や修道院の付属学校、さらに大学などでは音楽が学問として学ばれたことから、ポリフォニーによる歌曲も作曲されるようになり、楽譜の書き方も工夫されて、次第に複雑な技法を用いた作曲が行われるようになる。その結果14世紀に入るとアルス・ノヴァが、さらに世紀末にはアルス・スブティリオールが発達し、一般には極めて演奏困難な歌曲が現れることとなった。それに対して15世紀に入ると、そのように技巧的に高度な手法にはよらず、歌い易く、聴き手にも快く響く作品が現れるようになる。その段階で歴史は中世からルネサンス期に移行することとなったのである。

 

金澤正剛 KANAZAWA Masakata

1934年東京生まれ。1952年に私立武蔵高等学校を、1957年に国際基督教大学教養学部を卒業。アメリカに留学し、1966年にハーヴァード大学大学院博士課程を終了(音楽学)。ハーヴァード大学イタリアルネサンス研究所(フィレンツェ)の研究員などを経た後、1982年に国際基督教大学教授に就任、同大学宗教音楽センター所長を兼ね、同大学名誉教授。現在キリスト教礼拝音楽学会、日本リュート協会、日本イタリア古楽協会、日本ヘンデル協会等の会長、及び国際音楽資料情報協会日本代表。前日本音楽学会会長、日本オルガン研究会会長、国際音楽学会理事。著書 The Musical Manuscript Montecassino 871Oxford: Clarendon Press, 1978; Isabel Popeと共著、英文)で1980年度 ASCAP賞を、『古楽のすすめ』で1998年(平成10年)日本ミュージック・ペン・クラブ大賞を受賞。他に『中世音楽の精神史』、『キリスト教音楽の歴史』などの著書がある。Ph. D. (ルネサンス音楽史専攻)。

 

花井 尚美 HANAI Naomi

武蔵野音楽大学声楽科、デン・ハーグ音楽院バロック声楽科、ブラバント音楽院古楽声楽アンサンブル科(演奏家ディプロマUM取得)をそれぞれ卒業。声楽アンサンブルの一員や、ソロ歌手としてオランダ、ベルギーを中心に欧州各地で演奏、録音で活躍後、96年帰国。古楽声楽のスペシャリストとして演奏活動を行う。現在、中世女声アンサンブル「ド・リーフデ」指導者。「ヴォーカル・アンサンブル カペラ」メンバー。

 

古楽アンサンブル アントネッロAnthonello

濱田芳通、石川かおり、西山まりえ による、17世紀以前の霊感に満ちた作品をレパートリーとする古楽アンサンブル。躍動感、ビート感覚、そしてスピリチュアリティを内包した即興性溢れる古楽本来の演奏は、ヨーロッパでも高く評価されている。1994年結成、2005年度には古楽器奏者としては初の「ホテルオークラ音楽賞」を受賞。 2006年より自主レーベル『アントネッロ・モード』を始動。リリースするCDはいずれも「レコード芸術」特選盤に選ばれるなど高く評価されている。